「きゃあああああ!! た、助けてーーー!!」
とりあえず大声で叫んでみる。同時に逃げ出すけれど、その後ろをウミガメモドキが包丁を手に追ってきた!
「どこ行くんだい、アリスー!? 料理は仕上げが肝心なのに!」
「それはチョコの仕上げじゃないわ!」
厨房の扉を開こうとすると、後ろからアタックしてきたウミガメモドキのせいで同時に私達は床に転んでしまった。
でもぼやぼやしている場合じゃない、逃げなきゃ!
何とか這うようにドアを目指すと、後ろからガッシと足首をつかまれた。
「お願いだよアリスゥー! 女王様のためのスペシャルメニューなのにー!」
「嫌だってばーー!!」
あわわわ、どうしよう、何とか這いずって進むのはいいけれど、厨房のドアノブは遥か上。あれを回さないとドアは開かない。
慌てるあまり混乱していると、
ぷっぷー!
少し間の抜けた音がした。そして、
「ダメですよー料理人ー!」
可愛らしい声が聞こえた。え、誰だろう?
でも見回しても誰もいない……と思ったら。
顔の横で、またラッパの音が聞こえた。そちらを見ると、ハートのトランプ達がいる。
「アリスを傷つけたら女王様に怒られるんですー!」
一人(一枚?)が言うと、もう一人がまたラッパを鳴らす。
「そんな! 僕はただ女王様に豪華なデザートをあげようと!」
「誰がそんなものを食べたいと言ったの、首なし!」
ウミガメモドキの言葉に、怒った女の子の声が答える。
「……あ」
「じ、女王様!」
見ると、いつの間に来たのか、転がっている私達の傍らに女王様が立っていた。
明らかに怒っている女王様に、ウミガメモドキは嬉々として言い募る。
「ああっ女王様ー! 待っててくださいね、ただいまアリスのランチとデザートをお作りしますからっ」
「お黙りなさい! わたくしたちのアリスに何をしようとしているの!」
女王様はウミガメモドキに向かって怒鳴ると、持っていた鎌の柄をゴルフのステッキのように構えて、またウミガメモドキを吹き飛ばした。
あ〜れ〜、というドップラー効果を残してウミガメモドキは厨房の端っこに流されて行ってしまった。
「アリス、大丈夫? 怪我はなくて?」
「う、うん。ありがとう……」
女王様の手を借りて私は起き上がる。
……良かった、少し危なかった。
「ところでー、何をしてたんですかー?」
「この転がってる黒いの、何ですかー?」
「あ、それは……って、ああああ!!」
トランプの兵隊達の言葉に振り返り説明しようとした私は、それを見て絶叫した。
折角作ったチョコレートが、さっきの騒動のせいで見事に床にバラバラに落ちている。
「アリス? それはなぁに?」
女王様も不思議そうにそう聞いてきた。
ああ……内緒でやるって計画も、これでおじゃんになってしまった……。
「チョコレートを作ろうと思ってたんだけど……」
この惨状だ。
「まあ……。あら、でもチョコレートが食べたいのなら、今からまたウミガメモドキに作らせるわ!」
女王様はバレンタインを知らないのか、私が甘いものを食べたくて作ったのだと思っているみたいだ。
どうしよう?
⇒もう一度厨房を借りて作る
⇒家に帰って作ろう
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